1.多様な事業方式の採用 |
- まず、事業方式のバリエーションが増えたことが特徴である。
- 事業方式としては、以前から主流であった等価交換方式(全部譲渡方式)に、円滑化法の組合施行方式(4例)、個人施行方式(1例)が加わっている。やや特殊であるが、土地区画整理事業区域内の事例である第五レジデンス・サンシャインにおいては、デイベロッパーの参加組合員としての参加を得ることなく、組合員による自主的な建替え事業が行われている。
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2.隣接地を活用した計画手法の増加 |
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計画手法面では、隣接地をうまく活用した事例が7例中4例を占めることが挙げられる。
- 再建マンション敷地の一部を含んだ隣接地(換地)に再建した第五レジデンス・サンシャイン、日影規制をクリアして有効利用を図るために隣地を買収した小笹東門クラブ、隣接する公団用地(現都市再生機構)を取り込んで、そこに再建マンションを先行的に整備した旭ヶ丘第二住宅等、平成14年の区分所有法改正の要点である敷地の同一性要件の緩和を上手く活用している。
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3.還元率100%未満の建替え事例の増加 |
- 次いで、還元率が100%未満の事例が増えている。
- 従来の等価交換方式の建替え事業においては、還元率が100%以上の、区分所有者は無償で従前床面積を確保できる事例が多数を占めていた。7例中5例は還元率100%未満であり、小笹東門クラブと江戸川アパートメントについては50%台の還元率である。法改正により区分所有法の4/5の建替え決議を積極的に採用できるようになったことが背景にあると予想される。
- しかし、2団地の再入居率は低く、小笹東門クラブについては3/4の従前区分所有者は再入居していない。居住の継続性という観点からは議論の余地があるが、「戻り入居は未定であるが建替えに賛成である」という非積極的賛成者を決議に取り込めるようになったことも法整備の効果といえよう。
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4.やはり合意形成を支える環境が鍵 |
- 3年以下の短期の検討期間(検討組織の設立等〜竣工)による建替え事例が2件ある。いずれも小規模で特殊な要因が実現を後押ししているものの、これまででは考えられない短い期間で竣工に至る例の出現には、近年のマンション建替えを支援する制度の充実が背景にあると考えられる。
- 一方で、上記以外の事例はいずれも10年以上の検討期間を要している。
- こうした事例では、成功要因として、「従前の良好なコミュニティ」、「理事等のリーダーシップ」、「事業協力者や合意形成コンサルタントの協力」等がほぼ共通してあがっており、合意形成を支える環境が事業の成否を左右することは変わりない。
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5.事業協力者の役割の重要性 |
- 事業協力者の協力の重要性も変わらない。7例中6例が民間ディベロッパーの協力を得ている。
- 権利変換計画の作成等の事業計画の立案・実行や保留床の処分等にとどまらず、精力的な合意形成活動や反対者に対する売渡し請求資金の手当て等、その役割は多岐にわたり、しかも重い。
- 円滑化法の整備により、従前の権利者組織を継承した建替組合が事業の主体になる仕組みが整ったが、事業協力者の力がなければ、事業が実現しにくいことも実態といえよう。
- 民間ディベロッパーにとっては、事業採算が取れると判断したから参加組合員等に加わっているわけであるが、逆に考えれば、事業の見込みのない、特に保留床が処分できない事業には参画しないことになる。今後、市場性の厳しいマンションの建替えを如何に推進するか、検討課題といえる。
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