TOP > マンション再生に関する事例調査 > 参考資料  マンション改修等に関する合意割合について

大規模修繕工事・改修工事は、その規模・内容・程度等から、共用部分の変更工事となるのが一般的である。共用部分の変更については、区分所有法第17条において次のように規定されている。

■区分所有法における「共用部分の変更」

第17条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2. 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

共用部分を変更する場合には、集会の決議が必要であり、その決議要件は、共用部分の形状又は効用の「著しい」変更を伴う場合と、そうでない場合では異なる。著しい変更を伴う場合には、区分所有者数及び議決権の各3/4以上の特別多数決議が必要となる(ただし、区分所有者の定数のみは規約でその過半数にまで減じることができる)。一方、著しい変更を伴わない場合は、区分所有者数及び議決権の各過半数による集会の普通決議で決することができる(ただし、規約で別段の定めをすることができる)。
共用部分の変更工事が、「著しい変更」に当たるかどうかの基本的な考え方は以下のとおりである。

■決議要件別の共用部分の変更工事例
決議要件
工事の内容
該当すると考えられる共用部分の変更工事例
普通決議(1/2)
形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更
  • 建物の適切な維持・保全の観点から定期的に実施する必要のある計画修繕工事(鉄部塗装工事、外壁の補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新(取替え)工事、証明設備工事、テレビ共聴設備工事、エレベーター設備の更新(取替え)工事等)
  • 建物の基本的構造部分の加工の度合いが小さい、柱や梁への炭素繊維シートや鉄板を巻き付ける等の耐震補強工事
  • 建物の基本的構造部分(壁・柱・スラブ等)の取り壊しを伴わない階段へのスロープ・手すりの設置
  • 防犯カメラ・防犯灯の設置、窓ガラス・玄関扉等の一斉交換工事
  • 既存のパイプスペースや空き管路を活用した、光ファーバー・ケーブルの敷設やオートロック設備の配線工事
  • 既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事 等
特別多数決議(3/4)
形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更、又は敷地の利用の著しい変更
  • 既存住棟への集会所・倉庫、エレベーター等の共用部分の増築等により、既存建物の外観形状を大きく変化させる工事
  • 戸境壁やスラブの開口、既存階段室のエレベーターへの改造など、建物の基本構造部を大規模にわたって加工する工事
  • 居室の増築(注1)
  • 住戸の2戸1戸化(注2)
  • 用途変更(例:商業・業務系から住居へ 注3)
  • 集会所等の既存の附属施設の建替え、増築、大規模な改造工事
  • 敷地内の広場・公園を廃止し駐車場や駐輪場に変更するなど、敷地表面の利用を大きく変化させる工事 等
全員同意 共用部分の所有関係の変化を伴う変更 空き店舗・空きオフィス等の専有部分を集会室等に変更する場合など、専有部分を共用部分化するにあたり、区分所有者全員による専有部分の取得を伴う工事 等

参考資料:「改修によるマンション再生マニュアル」,国土交通省国土技術政策総合研究所監修;平成16年9月

注)手続き上の留意事項

一棟型マンションにおける一般的な留意事項を示したもので、団地型マンションの場合は追加手続きが必要

注1

居室増築の実施に関する手続き

  • まず、居室増築の実施に関する規約を整備することが必要。マンションでは「区分所有者の共同の利益に反する行為」をすることは禁止(第6条 *)されており、一般的に規約や使用細則には増築・改造禁止条項が盛り込まれている。集会における区分所有者数及び議決権の各3/4以上の多数により規約を変更しておく必要がある
  • 居室の増改築工事は、既存建物の外壁形状等に大きな加工を加える行為であることから、共用部分の形状又は効用の著しい変更工事となる。従って、3/4以上の特別多数決議となる。
  • さらに、居室増築により各専有部分の床面積が増加したことによる共用部分の共有持分割合の扱い方についての検討が必要。@区分所有法は共有持分の割合が専有部分の大きさによって決まることを原則としている(法第14条)。専有部分の大きさが変わった分だけ、共有持分割合も変更する場合、全員合意が必要となる。 2.実務的な方法として、専有部分の大きさが変わっても共有持分割合を変更しない方法も考えられる。こうした規約が整っていない場合は、区分所有者数及び議決権の各3/4以上の特別多数決により規約を変更する必要がある。
  • 但し、居室増築を行う単位は1棟単位で全住戸が同時に行うことが一般的であると考えられるため、実際上は、区分所有者全員の同意により行われると考えられる。

注2

住戸の2戸1戸化に関する手続き

  • 注1同様、居室増築の実施に関する規約を整備することが必要。マンションでは「区分所有者の共同の利益に反する行為」をすることは禁止(第6条)されており、一般的には、規約や使用細則では、許可なしに戸境壁やスラブを改変することは禁止されている。集会における区分所有者数及び議決権の各3/4以上の多数により規約を変更しておく必要がある。
  • 居室の2戸1戸化工事は、戸境壁等を改変する行為であることから、共用部分の形状又は効用の著しい変更工事となる。従って、3/4以上の特別多数決議となる。
  • 一部の住戸のみが2戸1戸化工事を行う場合は、区分所有者数及び議決権の各3/4以上の特別多数決による集会の決議で承認を与えることになると考えられる。

注3

用途変更(例:商業・業務系から住居へ)

  • マンション内の区分所有権の対象とされている商業・業務系の専有部分床を住居に用途変更するにあたって、建築工事を必要としない場合は、専有部分の利用目的を変更するだけの行為であり、管理組合の特段の合意は必要ないと考えられる。
  • 但し、注1・2と同様、規約で用途変更が禁止されている場合は、用途変更できるようにしておく必要がある。
  • 用途変更に伴い、共用部分の工事を行う場合については、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴うかにより、普通決議で足りるか、3/4以上の特別多数決議を必要とするかを判断する必要がある。
  • 一般的に、採光基準に適合させるために外壁に開口部を設けるなどの建築工事を行い、外観の著しい変更を伴う場合や、一つの階の専有部分が一体所有され商業・業務系の一区画として利用されていたものをいくつかの小さな住戸(専有部分)に分割する場合(戸境壁が全体共用部分として取り扱われる)、等については、共用部分の形状又は効用の著しい変更工事となるため、3/4以上の特別多数決議となる。

参考資料:「改修によるマンション再生マニュアル」,国土交通省国土技術政策総合研究所監修;平成16年9月

 

*区分所有法における「区分所有者の権利義務等」

第6条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

2. 略

3. 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

 

マンション再生協会