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(1)合意形成 (2)計画手法 (3)手続き・法制度 (4)その他(マンションのタイプ別等)

合意形成後は建替え・改修事業の手法や支援方策が異なるため、別に記述する。

 

建替え事業経験者からは、事業を推進できた理由としてマンション建替え円滑化法の成立をあげる声が複数ある。法の意図した安定した事業の実施、特に従前・従後資産の扱いや法に基づく手続きの確立等が、事業を後押ししていると考えられる。法整備前と比較して、格段に課題が減少したと考えられるが、事業経験者からは、要望も含め、手続きや法制度の不備等を指摘する声もある。こうした観点から、課題を整理しておく。
1.借家権者の同意取得の困難性
  • 複数の建替え事業経験者から指摘されている課題である。円滑化法第57条第2項において、権利変換計画の原案について、借家権者、底地権者、隣接施行敷地の所有権者等については必ず同意が必要とされる。
  • 反対者が事業の長期化・混乱を狙って、意図的に借家権者に居住継続させようと試みることも懸念され、対応が必要と考えられる。
2.その他の現行法制度の整備(建替え事業経験者等の指摘)

1.以外で、マンション建替え事業経験者の指摘する課題、及び専門家チームによる意見交換会で指摘のあった課題のうち主要なものは次のとおりである。

a)区分所有法
  • 「時価」の明確化
  • 修繕積立金の分配手続き等が不明
  • 住戸の明渡し方法の確立
  • 別敷地での建替え事業を行える法制度の整備
b)マンション建替え円滑化法
  • 担保権者の同意取得の困難性
  • 権利変換計画の柔軟化
  • 保留敷地処分の公募原則の緩和
  • 保留床処分の公募原則の緩和
  • 土地建物登記簿謄本の閲覧及び交付に費用がかかる問題 等
c)その他
建替え時の増床資金及び仮住まい関連諸費用の融資制度

 

 

1.多様な改修を実現するための変更規定の整備
  • 修繕・改修工事は共用部分の変更工事となることが一般的であり、共用部分の変更に関する区分所有法の規定は第17条である(参考資料参照)。ここでは、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う場合は区分所有者数及び議決権の各3/4以上の特別多数決、伴わない場合は1/2以上の普通決議を行うことが規定されている。平成14年の法改正において、この第17条は変更になり、何が「著しい変更」なのか、その概念も整理されつつある(「改修によるマンション再生マニュアル」参照)。
  • しかしながら、例えば、専有部分である居室を増築する場合、専有部分の大きさが変わった分だけ共用部分の共有持分割合を変える場合は全員同意が必要となる。また、新たに住戸数が増えた場合、共有持分権や敷地利用権をどうするかという課題があり、これも全員同意が必要とされる。
  • 今後、専有部分の増減や戸数の増減を含んだ改修ニーズの発生は十分に考えられ、多様な改修像の実現を視野に入れた区分所有法の変更規定の整備が必要と考えられる。

 

2.改修支援策の整備
  • 建替え事業には優良建築物等整備事業の補助制度があり適用の可能性があるが、改修には同事業制度の耐震改修型(平成17年度から住宅・建築物耐震改修等事業に統合)を除いて、制度は整っていない。優良建築物等整備事業は、建物共用部に対する整備補助や屋外整備に対する補助がある。同じ、「再生」を目指すという観点からは、建替えだけでなく、補助制度の改修版の整備も検討に値すると思われる。
  • また、改修に際して劣化状況等の詳細な調査が必要で多額の費用が必要とされることが多い。基礎的な現況調査に対する支援措置も検討課題といえる。

 


マンション再生協会