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(1)合意形成 (2)計画手法 (3)手続き・法制度 (4)その他(マンションのタイプ別等)
1.マンション再生像の多様化・明確化
  • 現状の再生像は、極論すれば、「全面建替え」か「修繕(性能・機能回復)」にとどまっている。今後の再生ニーズの増大や合意形成の難しさ等を考慮すれば、部分建替えや改修(増改築を含む)も含め、建替えと修繕の中間に位置する多様な再生像があって良いと思われる。
  • 再生の選択肢が少ないため、再生メニューは少なく、関連する再生技術開発が進んでいない。再生メニュー・技術の開発とともに、それらのコストダウン・普及を図る取り組みも必要といえる。
2.再生方向(建替えか改修か)の判断指針の整備
  • 将来、どのような水準を目標とするか明確でないことも関連して、建替えか改修か、どのような再生事業をいつ行うか、区分所有者のための客観的な判断指針の整備はまだ不十分と思われる。
  • また、再生方向の判断を適切に助言できるマンション「再生」の専門家の育成とともに、専門家の助言が得られるような仕組みの検討も必要といえる。
3.長期修繕計画からマンション再生計画へ
  • 長期修繕計画の多くは20〜30年スパンで組み立てられているものの、大多数は建物の性能や機能を向上させる改良(グレードアップ)を目指したものではない。修繕にとどまっていては、社会的劣化に対応できていないことも多いと考えられるし、改修を重ねたとしても、いつかは建替えを行う必要がある。
  • マンションは、明確な目標像と実現のためのプログラム、及びその費用を定めたマンション再生計画を備えるべきと考える。但し長期の計画は必ず陳腐化するので、定期的に手を入れていく仕組みも必要である。
マンションの経年変化と改修・建替えの関係性

 

4.既存不適格マンションへの対応
  • 一定以上の増築や主要構造部の大幅な改築には確認申請が必要で、建築基準法、消防法等、各種法規をクリアする必要がある。既存不適格状態がある場合、適格化するための対応が原則必要で、この負担が障害となって合意形成できず改修が進まない。安全性や機能性が担保できることを条件として、柔軟な対応を検討する必要がある。
5.合意形成促進策の充実化(特に検討初動期の専門家協力を適切に得るか)
  • マンション建替え事業経験者の指摘にもあるように、検討初動期にコンサルタント等の専門家の協力を得られる環境をいかに整えるか、法整備以前からの課題である。
  • アドバイザー派遣制度や助成制度の整備、あるいは修繕積立金を「再生」検討に簡易かつ柔軟に使えるよう区分所有法整備を行うことも考えられる。
6.事業協力者の協力を得られにくいマンションへの対応
  • 建替え事例の大多数は事業協力者の協力を得ており、果たす役割の大きさが改めて確認できた。法整備によりディベロッパーが参画しやすい環境が整いつつあると考えられ、一定の事業性の見込めるマンションにおいては、徐々に建替えは進んでいくものと予想される。
  • しかしながら、事業協力者の協力を得られにくいマンション、例えば郊外立地の大規模団地型マンションにおいては、再生行為への合意形成が図られないことが多いと考えられる。多くは改修により延命を図る必要があるが、改修事例は限定的である。また、いつかは建替えを行う必要がある。今後、改修事業に事業協力者の参画を得られる手法や、民間活力に大きく依存しない建替え手法を検討していく必要がある。
 


マンション再生協会