TOP > マンション再生に関する事例調査 > 建替え事業経験者等の指摘する法的課題
建替え事例の事業経験者に対して実施した「建替えに関する法的課題」調査において指摘のあった主要課題と、その主要課題をテーマとして実施したマンション再生協会の専門家チームによる意見交換会で指摘のあった追加課題を整理する。(:アンケート調査での主要課題  :専門家チームによる追加課題)
(1)事業の各段階別

課題

関連法*

区法

円法

1)建替え検討段階

検討初動期の検討費用の準備
検討に際して、外部の専門家の協力を得る場合、検討費用をいかに捻出するか、課題。補助等の手立てを考慮すべき。

 

2)決議後組合設立段階

「時価」の明確化
「訴訟になり長期化する」ことを考慮して、「時価」の一層の明確化が必要。また、法改正に向けた意見として、「売渡し請求の時価への建替事業リスクの反映」が必要との指摘あり。

 

 

修繕積立金の分配手続き等が不明
建替え決議が成立し、管理組合が解散することとなった場合には清算手続きを実施し、修繕積立金などの残余財産は組合員で分配することになるが、建替え決議時点での組合員(決議非賛成者も含まれる)に分配すべきか、解散総会時点での組合員に分配するかなどの基準が明確でないため争いになる可能性がある。具体的な手続きや基準を定めるべきではないか。

 

 

住戸の明渡し方法の確立
明渡し自体は訴訟などの法的手段で担保されるが、訴訟自体が大きなリスクとなり、占有者の過剰な要望に対応せざるを得なくなる。簡易迅速な紛争解決方法が必要とのこと。

 

3)権利変換段階

 

 

借家権者の同意取得の困難性
借家権者全員の同意取得義務は、事実上借家権者に拒否権を与えていることと同義であり、弱者保護の観点を踏まえたとしても衡平を失している。借家権移行も希望しない、転出も希望しない、合意契約にも同意しないという場合には、借家契約を解約する正当事由として認められるようにすべきという指摘あり。

 

 

担保権者の同意取得の困難性
対象資産の担保価値が減じない場合には代替措置を講じれば同意を要しないことを明確にしてはどうか。現法で担保権者が未同意の場合、未同意の理由書を添えて認可申請できると定められているが、どのような理由か明らかにされていない。通達等で例示できないかという指摘あり。

 

 

権利変換計画の柔軟化
(組合特別決議時の組合員の頭数の問題)
特別決議時の議決権は第30条2項において、「施行再建マンションのうち組合と参加組合員の専有部分が存しないものとした持分」と規定されている。しかし、「組合員」の定義として、第56条の権利変換を希望しない組合員、及び第64条の売り渡し・買い取り請求により権利を失った組合員が除かれるという事項が明文化されていないため、特別決議の手続きに支障が出る可能性がある。

 

 

4)その後

 

 

 

保留敷地処分の公募原則の緩和
保留敷地の処分も公募が原則とされるが、保留敷地も保留床と同様にこれを第三者に処分することにより事業費に充当するためのものであるため、事業成立性を担保するためには計画段階から処分先と価格の目処が立っていることが望ましい。この点、保留床の場合は参加組合員となることで公募によらずに床を取得することが担保されるが、保留敷地の取得予定者は参加組合員となることはできないので、将来の保留敷地取得を確実に担保することが困難であり、事業成立性に影響がでる。制度の目的に照らし公募原則の適用を除外すべきではないか。

 

 

保留床処分の公募原則の緩和
施行者が取得した保留床については公募が原則とされるため、優先分譲には関係権利者の全員同意が必要と解される。この点、組合員の親族など一定の範囲の第三者には公募によらずに優先分譲を認め、事業の規模や特性を反映させ機動的な事業推進に役立てる手段とできないか。

 

 

管理組合の法人化ができないことへの対応
円滑化法第94条1項において、施行者による管理規約の設定が規定されているが、法人登記ができないという理由により、この時点での管理組合の法人化ができないとされている。

 

 

増床資金及び仮住まい関連諸費用の融資制度の確立
仮住まい費用や引越し費用、再建マンションの備品やオプション・設計変更費用、登記費用等が200〜400万円必要であるため、融資制度(公庫や県・市)による建替え諸費用ローンの実現を望む。

 

 

注)その他、「管理組合の清算手続きにおいて、瑕疵がないようにすべく、マニュアルを整えるべき」、「権利変換期日以降の特別決議において、参加組合員にも土地持分に応じた議決権を認めてはどうか」等の指摘あり。

 

(2)マンションのタイプ別

課題

関連法*

区法

円法

1)団地型

 

 

一団地の住宅施設、一団地認定の廃止・変更手続きの明確化
都市計画法第11条の一団地の住宅施設、建築基準法第86条の一団地認定の廃止

 

 

一団地認定の変更手続きの簡素化
変更の手続きに膨大なエネルギーを要するので簡素化できないだろうか。

 

 

郊外型大規模団地における段階的建替えの実現方策の検討
市場性があまり高くない郊外型の大規模団地での段階的な建替えを実現しやすくする方策が必要。現行のままでは、機動的な合意形成が難しい。

 

 

2)テラスハウス(敷地分有)

未賛同者への売渡し請求
未賛同者への売渡し請求ができるよう区分所有法などの改正を行うことが必要。

 

 

3)借地権設定型

底地権の権利変換対象化
老朽化マンションの建替えを円滑に進める観点から、一定の要件(例:底地権関係権利者の同意など)を前提として、借地権型マンションの場合の底地権も権利変換対象とする(あわせて権利変換手続き開始の登記の対象とする)こと等の柔軟な対応が望まれる。

 

 

4)隣地を取り込んで建替えを行う場合

 

隣接施行敷地の権利変換対象化
隣地所有者が権利変換に参加し、床を取得して事業に参加できる仕組みを作り、隣地所有者の事業参加を動機付ける方策の導入が必要。

 

 

現敷地の一部を譲渡する場合の円滑化法を使うスキームが不明確
現敷地の一部を譲渡する場合、円滑化法のスキームが想定しにくいとの指摘。

 

 

注)その他、団地型については、「棟ごとに合意状況が異なる場合がある」「建築基準法の一団地認定区域に隣接団地を含んでいることがあり、権利者全員の合意が必要な場合がある」、また「異なる管理のマンションが隣接していて共同で建替える場合、円滑化法上の組合施行の進め方を示して欲しい。」との指摘あり。

 

(3)法改正に向けた意見・提案

意見・提案

関連法*

区法

円法

別敷地での建替え事業を行える法制度の整備
建替え決議に基づいて、別敷地で建替えが行える制度の創設が必要。仮住居の費用負担等がなくなり、不安が解消される。

 

 

権利変換登記における土地表示登記・所有権保存登記
円滑化法に係る不動産登記に関する政令では、権利変換の登記(土地の登記)において土地表示登記や所有権保存登記等が認められていない。マンションの敷地が複数筆にわたる場合、煩雑な手続きが発生するので、都市再開発法同様、土地表示登記や所有権保存登記が認められないか。

 

 

施行再建マンションの登記における表示と権利の同時登記
保留床分譲の際、不動産登記に関する政令で施行再建マンションの登記は建物の表示と権利の登記を同時にすることが定められている(マンション分譲では、引渡しまでに表示登記をして、引渡し後に権利登記を行うことが一般的)。このため、一旦、参加組合員等の名義で保存登記し、エンドユーザーに移転登記するという2段階の手続きを行うこととなる。権利と登記を二段階に分けるようにするか、二重の課税とならないような扱いが望ましい

 

 

土地建物登記簿謄本の閲覧及び交付に費用がかかる問題
組合設立認可申請や権利変換計画認可申請等において、認可権者から申請書の添付書類として登記簿謄本が事実上義務付けられている。登記簿謄本の閲覧や交付の機会は頻繁にあり、その費用は少なくない。都市再開発法第65条では無償で閲覧及び交付を求めることができるようになっており、これに準じた法改正を期待。

 

 

権利変換手続き開始の登記が有名無実化していることの問題
建替組合設立以後、権利変換期日までは、権利を処分しようとする者は、事前に組合の承認を得ることが義務付けられている。しかし、実態として、組合の承認手続きを経ずに権利を処分するケースがある。法務局が施行者の承認のない申請を受理しない仕組みの確立が望まれる。

 

 

注)その他、(1)で提示した「借家権者・担保権者の全員同意緩和」、「保留床の公募原則緩和」等が意見としてあがっている。また、「決議内容を誠実に履行しない区分所有者に対する売り渡し請求制度の創設」、「組合の主体性が強すぎる(実態はコンサルや事業協力者にお任せの部分多い)」、「施行再建マンションの価額の算定基準が細かすぎる。その為の費用もかかる。任意がよい。」、「最終清算金に対する税の優遇を法定再開発同様認めて欲しい。」、「事業計画添付資料(特に敷地設計図の詳細な法定記載事項)は簡略化できないか。」等の指摘あり。
* 「区法」=区分所有法 「円法」=建替え円滑化法 「他」=建築基準法、都市計画法等


マンション再生協会